革新の分岐点 Story vol.4
革新の分岐点 Story vol.4
今では当たり前となった、工作機械の自動化。
しかし、その裏には、
機械中心の発想からソフトウェアへの転換をはかり
自動化のあり方を問い直した、ひとつの挑戦がありました。
自動車や航空機などの精密部品を加工する工作機械。
一台の自動車は、およそ3万点もの部品で構成され、それらの部品を加工する現場では、常に高い生産性と信頼性、そして安定した品質が求められます。
今でこそ部品加工の量産ラインは自動化によって高効率・高品質を実現していますが、80年ごろまでは、材料のばらつきや条件の違いによって機械が停止し、そのたびに人が時間をかけて復旧作業を行うのが当たり前の光景でした。
もちろん、停まらない、壊れない機械を製造することが理想ではありますが、ムラテックは企業の思想として、自動化による工作機械の進化をめざす珍しい存在でした。
ムラテックの工作機械事業における主力製品のひとつが、金属部品を削って加工する「旋盤」です。なかでも、一台で部品の表裏を自動加工できる「2軸旋盤」は高い効率を誇る機械ですが、当時はひとつの課題を抱えていました。それが、加工ワークを回転主軸に着脱して工程間のワーク搬送を行う「ローダ」です。
当社が最初に採用した旋回式ローダ(通称ファンローダ)が旋回する「旋回式ローダ」は、高速で加工ワークを自動着脱できる一方、動作範囲が固定され、決まった動きしかできませんでした。同一部品を加工し続ける場合には適していましたが、加工ロットが変わったことでワークの長さが変わると、ローダの前後軸の停止位置を調整する必要があり、かなりの時間を要していました。
しかも、その調整を担えるのは限られた熟練者のみ。定期的に段取り替えを行う現場では大きな負担となり、自動化には程遠い状況でした。より自由度が高く、自動でワーク変更ができるローダが求められていたのです。
旋回式ローダ以外では、アームが前後左右の2軸で動くローダもありましたが、加工ロットごとに調整が必要である点は変わりませんでした。打開策を探る中で、アイデアマンとして知られていた当時の部長が、自宅の座敷で寝転びながら天井の升目を眺めていたときに、
「この升目のように、タテヨコ自在に動き回れるローダがあれば、どんな加工素材にも柔軟に対応できるはずだ」
とひらめき、すぐさま開発現場に三次元空間を自在に動けるローダの構想を伝えます。こうして、X・Y・Z軸で動く「3軸直交ガントリーローダ」の開発が始まりました。
当時、ローダは旋盤本体の付属装置という位置づけで、専門メーカーから調達するのが一般的でした。そうした中でムラテックは、求める自動化を自らの手で実現するため、あえて自社開発の道を選びます。しかし、ローダの自社開発経験がなかったこともあり、最初に完成した試作機は鉄の塊のように無骨で、動きも遅く、周りの装置にぶつかったり、ローダが落下したりすることさえありました。
どうすれば理想のローダを実現できるのか。機械の設計や原料を見直すなど試行錯誤を重ねた末に、開発メンバーがたどり着いた答えが、ローダの機械的構造だけを追求するのではなく、機械の状況に応じて動作を柔軟に変える制御を実現することでした。当時の工作機械業界の製品開発では、あくまで機械が主役で、ソフトウェアは補助的な存在と見なされていました。そんな時代に、ソフトウェアで道を切り拓こうと考えたこと自体が、大きな革新だったと言えます。
優れた機械をつくることが最終目的ではなく、お客さまが求める自動化を実現することが目的だったムラテックだからこそ、業界の固定観念に縛られることなく、ソフトウェア制御という革新的な選択に踏み出すことができたのです。

そして1988年、独自制御による3軸直交式ガントリーローダを初搭載した「MW16II」が世に送り出されます。しかし、それは完成ではなく、新たなスタートでした。お客さまの製造現場から、想像を超える数の要望が寄せられたのです。
固定シーケンス(ROMに書き込まれた動作)は現地で変更できません。ROMを現地に送って物理的に交換する必要がありました。これを操作盤から変更できるプログラム方式に変更したことで、動作変更はローダープログラムを変更することで対応できるようになりました。しかし一般的な「一筆書き」のプログラムの場合、機械を再起動すると先頭から実施されるので機内にある全てのワークを外して初期状態にしないといけなくなり、途中まで加工した部品は廃棄せざるを得ません。そこで考え出されたのが、機械の状況を把握し何をすべきかを自動的に判断して実行する途中起動型ローダープログラムです。

「これでは、本当の自動化とは言えない」
お客様の声に触れたエンジニアたちは、プログラムの設計思想そのものを見直します。
動作プログラムをブロック単位に細分化し、異常停止した場合でも、プログラムの先頭に戻るのではなく、該当ブロックから作業を再開できる仕組みへと改善。これが、ムラテックオリジナルの「途中起動型ローダプログラム」です。
絶対に停まらない機械を目指すのではなく、停まってもすぐに再開できる機械をつくる。
自動化を実現するための、柔軟で本質的なアプローチでした。
とはいえ、旋盤のローダだけが自動化されても、複数の工作機械やその周辺機器が連なる加工現場全体が最適化されるわけではありません。そこでムラテックは、周辺機器まで含めてトータルに開発・制御するという考え方に踏み出します。
ローダだけでなく周辺装置もプログラムで動かし、同時制御することで現場全体としての使いやすさを高めました。メインプログラムがローダを、ローカルプログラムが周辺装置を制御し、この2種は並走して実行できるマルチタスクシーケンス制御を特徴としています。ローカルプログラムは複数が同時に動作できるため、周辺装置ごとに準備すれば、同時に複数装置の制御が可能になります。これはムラテック独自の技術です。
やがてガントリーローダは、工作機械事業における究極の自動化提案である「ターンキー(*)」のコアシステムとして定着。お客さまの声に真摯に向き合いながら進化を続け、その品質と思想は、「2軸旋盤ならムラテック」という揺るぎない信頼へと結実していきます。 (*お客様がスタートキーをまわすだけで生産が可能な状態を指す)
自動化を「機能」ではなく、お客さまのための「価値」として磨き続けてきた姿勢は、ムラテックの自動化技術の象徴として、今もなお、さまざまな事業に息づいています。

お客さまに寄り添う自動化で
モノづくりの進化を支える
ムラテックの工作機械事業