第54期
伊藤夏穂さん
(大阪大学大学院 理学研究科 生物科学専攻 修士課程2年)
2023年4月~2025年3月
私は2023年4月より1年間、デンマークのオーフス大学にリサーチアシスタントとして滞在し、2024年4月からは同大学で博士後期課程の学生として研究を行っています。オーフスは海沿いのこじんまりとした街で、キャンパスは緑が豊かで大変美しく、研究に集中するのに適した場所です。

現在は、記憶がどのように形成されるのかを、遺伝子発現制御の観点から明らかにすることを目指しています。研究室では、私は主にゲノミクス技術を担当し、マウスの神経回路のスペシャリストである現地のポスドクと協力しながら、実験や解析を進めています。異なる専門性をもつ研究者との対話を通じて、データの見方が広がり、次の実験のアイデアもより豊かになります。個人では思いもよらなかった方向にプロジェクトが発展していく過程は、とても刺激的です。
文化的な面でも、所属する研究所には世界中から多様な背景をもつ研究者が集まっており、日々多くの学びがあります。なかでも印象的なのが、「ケーキクラブ」と呼ばれる週1回の交流イベントです。これは持ち回りで手作りのケーキをふるまい合うというデンマークの典型的な文化のひとつで、各国のスイーツを味わいながら互いの言語や文化について語り合います。平日の昼間という勤務時間中にこうした集まりが行われることには最初驚きましたが、今では大切なコミュニケーションの機会として欠かせないものとなりました。こうしたカジュアルな交流の中にこそ、チームの相互理解や信頼関係を築く土台があることを学びました。

このように充実した留学生活を送ることができたのは、ひとえに村田海外留学奨学会のご支援のおかげです。特に、事務局の方々からいただいた温かいメールには、何度も励まされました。心より感謝申し上げるとともに、奨学会のさらなるご発展をお祈りしております。