トップメッセージ

村田機械株式会社 代表取締役社長 村田大介

私たちの存在意義

 

私たちは、社会を支えるさまざまな産業において、お客様の価値創造をお手伝いするマシンをつくっています。「機械にできることは機械に任せ、人は人にしかできない仕事をする」ための、人にやさしいテクノロジーを追求してきました。日々の現場の課題への真摯な取り組みと、新しい技術への挑戦の両面から、お客様と共に社会の豊かさを実現することが、私たち村田機械の存在意義だと考えています。

 

事業業績と経営環境

 

前年度に引き続き、成長著しい半導体の工場向け搬送装置や、働き手不足や流通改革を背景とした物流自動化設備への需要によって、売上が大きく伸びました。部品調達の問題が収まり出荷が正常化した繊維機械事業でも、過去最高の売上を記録しました。EV化で自動車部品以外の分野へのシフトを目指している工作機械事業は売上が微減、ペーパーレスの流れで複合機からセキュリティやFAへ製品の転換を進めている情報機器事業は、サイレックス・テクノロジーの無線通信技術の貢献もあって昨年並みの水準を維持しました。全体としての売上増に円安の効果が加わり、営業利益でも過去最高を達成することができました。今年度も継続した成長を目指します。
一方で、国際政治・経済の変動による不確実性、特に材料・エネルギー価格の高騰や自由な貿易への制約が当社の事業に及ぼす影響は、年々増大しつつあります。変化する環境にグループとして柔軟かつ迅速に対応しつつ、その過程で新たな価値創造の機会を見出していきたいと願っています。

 

3カ年計画

 

今年は「つながりを形に・形をつながりに」をテーマとする3カ年計画の最終年度です。これまで追求してきた人・技術・事業の「つながり」を活かして、①強い製品やサービス、②未来の製造業に必要な情報インフラ(DX)、そして③組織の成長と多様化の中での組織風土の維持・改善に取り組んでいます。
②に関しては、2020年からのサプライチェーン問題での反省を踏まえ、設計の標準化・モジュラー化、情報の可視化・共有化によるデータドリブンな全体最適を目指して、ERPとPLMの導入を進めています。
③については、3年前から企業理念を見つめ直すプロジェクトを社内の各層にわたって進めてきました。その一環として、2023年4月には「革新の分岐点」というコーポレート・スローガンを定めました。企業理念にある「新しい技術の創造」に焦点を当てた全社の合言葉です。
これらの土壌から、①実際にお客様と社会に役立つ製品・サービスを生み出すことが、この3カ年計画の目標です。それぞれの事業において具体的な計画を進めていますが、決してそれで終わりではありません。「形をつながりに」。世に出した製品やサービスが、更に新たな創造に向けた「つながり」を生み出すよう、お客様を向いてフォローして参ります。


根本にある課題/内外のリスクと対策

 

先に挙げた政治・経済の変動に加えて、技術革新の時代における、専業メーカーや中国をはじめとする新興企業との競争などの外部環境のリスク。またグループの社員数が急増する中で2025年に創立90周年を迎える当社の内部組織のリスク。これら内外のリスクへの危機感が、企業理念プロジェクトやコーポレート・スローガンの制定の根底にあります。
内部組織のリスクである「大企業病」の症状のひとつは、「みんなと同じ」「これまでと同じ」に安住しようとする行動です。後述するD&Iの活動や、カーボンニュートラル対応の中心に製品開発を位置づける姿勢は、こうした行動を改める契機としても役立つでしょう。同時に、多様性や独自性の中からグローバルニッチを創り出すための手段として、外部環境リスクに対応する上でも重要と考えています。

 

環境配慮型製品の開発

 

気候変動に象徴される環境・資源の問題は、地球上の全ての人々が安全・健康で快適な暮らしを追求する過程で生じてきた、そして今後ますます大きくなる、人類共通の問題です。人類がそれを引き起こす上で強力な道具となったのが科学技術であると同時に、それを解決する鍵もまた科学技術にあります。
私たちが製造する設備機械は、衣料、金属加工、物流、半導体、それらで使われる情報通信など、幅広い分野で人類全体の生産活動に貢献してきました。それらの生産活動を見直し改めることは、私たちの製品を変えること、そのための新たな技術を開発することに他なりません。
より少ない環境負荷、電力消費をはじめ投入される資源エネルギーや労働を最小化する技術が、これまで以上に強く求められています。当社の特色である事業と製品の多様性を活かし、環境・資源問題の解決に向けた能動的な技術開発を行うことが、私たちの使命であると信じています。

 

ダイバーシティの取り組みについて

 

組織が多様性に対応しながら業務をこなすだけでなく、多様性そのものを活かして創造を行うことは、決して簡単ではありません。異なる属性をもつメンバーが、共通の目的に向けて積極的に協力し合う必要があるからです。分断が進む社会の中で、単なる黙認ではない相互の信頼と尊敬、それをもたらすコミュニケーションを敢えて追求する場は、歴史の中に見出すことができます。私たちの会社が、ささやかながらそうした場の一つとなることを願いつつ、遥かな目標に向けて歩みを重ねて参ります。

 

 

2024年7月

村田機械株式会社 代表取締役社長
村田大介

本内容はサステナビリティレポート 2024より転載しています。